徒然なる挽歌

ゲイが苦手なゲイの記憶と記録

「他人に迷惑をかけるな」という綺麗ごと

日本人って「他人に迷惑をかけること」を異常に恐れるし、「他人に迷惑をかける人」のことを異常に嫌うよね。

別に主語が大きいわけじゃない。俺はこれまでに広い世界を見てきたから、日本人も外国人も基本的にはほとんど同じくらい愚かだということを知っている。

最近やたら叫ばれるようになった「同調圧力」だって、他国・他民族にも当たり前のようにあるからね。むしろ日本の同調圧力は、アメリカなんかと比べるとマシなレベル。

 

でも「他人に迷惑をかけること」への嫌悪は、日本人は外国人より明らかに強い。その原因は、自己肯定感や共感力の低さや、他人に寛容になれない文化だろうね。

HUNTER×HUNTER』には、ジャイロという登場人物が登場する。彼は父親に「人間に迷惑をかけるな」と厳しく躾けられるが、その偽善に気づいた彼が父親を殺害するという場面がある。

ここでいう偽善とは、実際には「人間」とは「父親」のことであり、つまり「人間に迷惑をかけるな」は「俺に迷惑をかけるな」を意味するということだ。

これは「世間が許さない」という表現が実は「あなたが許さない」とする、いわゆる「太宰メソッド」と同じ論理なんだよな。

 

もちろん、悪意を以て他人に害を与えることは、大いに問題があるだろう。しかし最近は、くだらない些事にまで「迷惑」「迷惑」と叫ぶ愚か者が多すぎる。

君は他人に迷惑をかけないほど優秀な人間なのだろうか。例えば、君の仕事の遅さやミスは他人に大きな迷惑をかけているわけだが、それは許されることなのだろうか。

無能な人間ほど他人に厳しく、己の鎖で他人を縛ろうとする。こうした寛容性のなさが我が国を停滞させ、それどころか衰退させていることに、俗人たちはいつ気づくのだろうか。