徒然なる挽歌

ゲイが苦手なゲイの記憶と記録

ゲイとしての「初体験」の話

前回までのブログで「俺がいつ性的指向を自認したか」について、小学校から高校までの体験を交えて話した。

 

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今回はその流れのまま俺の「初体験」について語っていきたいと思う。ただし、下記の記事で説明しているように俺はアナルセックスが嫌いなので、本記事の内容は通常の初体験談とは異なる。

 

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高校2年のときに鬱病を患った俺は、それからほとんど学校に通うことはなかった。本来であれば卒業も危ぶまれていたが、教師の計らいで及第点を得て卒業することができた。

大学受験や大学進学が無意味なものだと悟っていた俺は、浪人などするつもりはなかった。働きたくもない一方で、とにかく都会に出たかった俺は、母の薦めで東京のIT系専門学校に通うことにした。

ちなみに、俺はすでに母にゲイであることをカミングアウトしていた。当時の俺と母の仲はまだ険悪なものだったが、それでも母は俺を応援してくれると言った。(一連の経緯についても別記事で語る。)

 

紆余曲折はあったが、俺は新宿で一人暮らしを始めた。実家では母のヒステリー発作のせいで安らぐ場所や時間などなかったが、俺は人生でようやく安らげる場所を手に入れたのである。

学校が始まるまで1週間ほどあったので、俺は原宿や渋谷などを遊び歩いていた。映画やドラマでしか観たことがない風景が俺の日常になったことを俺は誇りに感じた。

俺はすぐにゲイとしての活動、つまり新宿二丁目通いや恋人探しを始めた。昼間の二丁目は一見すると通常のビジネス街だが、日が沈むと途端に異様な雰囲気を放つゲイタウンとなる。

俺は何も考えず適当なバーに入って、すぐにカクテルを注文した。バーの姉ちゃんに「何歳?」と聞かれた俺はうっかり「18歳」と答えてしまい、彼女が苦笑いしながらカクテルを手渡してくれたのはいい笑い話だ。

その姉ちゃんはどうやらバイセクシュアルらしく、俺を少し気に入ったようだったが、勢いよく酒を飲み干した俺はすぐにその店を後にした。

高校生のときに飲酒経験があったため、これがアルコールの初体験というわけではないが、本格的なバーで飲むカクテルは格別だった。それから週に1回は二丁目に通うようになった。

 

さて、俺の初めての恋人は意外なことに二丁目ではなく、掲示板経由で出会った。当時はゲイアプリなどなかったから、「CoolBoys!」のような掲示板での出会いがメインだったのである。

そこで偶然ゲイのための飲み会なるものが主催されていたので、俺は参加を申し込んだ。土曜日の夜に歌舞伎町で集合とのことで、俺はそのときを待ち望んだ。

歌舞伎町で主催者を見つけた俺は参加費用を支払ったが、彼からは親切さがまったく感じられなかった。好みの男以外のゲイには礼儀を示さないような、無礼者のゲイは意外と少なくない。

当時の俺は金色の長髪でまるでホストのような容姿だったから、大半のゲイからは好まれなかった。

こうしたゲイコミュニティの「閉鎖的で多様性がない」ところは、俺が後年になってゲイコミュニティを嫌悪するようになった要因のひとつだ。

しかしながら、俺も見た目や振る舞いでほかのゲイを評価していたことに変わりはない。ただ一人を除いて、俺の興味を惹きつけるような男は居なかった。

 

彼は短髪で髭を生やしていて、少し素行が悪そうなヘテロセクシュアルの男という感じで、ほかのゲイの連中とは明らかに雰囲気が違っていた。

俺が彼のことを見詰めていると、その視線に気づいたのか彼が俺のほうを見て軽く微笑んだ。人付き合いが苦手な俺は、軽く会釈することしかできなかった。

飲み会が始まってから、俺たちはすぐに話し始めた。彼の名前はダイスケ。一人称が「俺」でゲイっぽさを微塵も感じさせない話し方だったことが、彼への印象をさらに高めた。

俺たちはほかの参加者など存在していないかのように、お互いのことだけを見て話した。彼は35歳でパチンコ店で働いており、自身の仕事を恥じているようだった。

今の俺であれば彼が恋愛対象になることはないが、若さゆえの世間知らずな感性や中学時代の「S」の影を追っていたのか、俺はとにかく彼に強く惹かれていたのである。

俺たちは夜が明けるまで酒を飲んだが、俺が疲労困憊していたり彼が仕事に行かなければならなかったりで、そのときは1週間後に会う約束をしてお開きとなった。

 

専門学校の入学式は明治神宮で行われて、それからすぐに俺の新たな学生生活が始まった。俺は人付き合いが苦手だが、すぐに4~5人の友人ができた。

授業の内容はすぐに理解できたので、俺は教科書や課題を先取りして進めるようになった。学校が予想外に楽だったこともあり、俺の意識はゲイ活動のほうにより強く向いた。

ダイスケとは約束の日にまた会った。そのときは歌舞伎町のカラオケに行き、オレンジレンジなどの曲を適当に歌った。俺はカラオケなど行ったことがなかったが、好きな人と一緒に歌うのは楽しいものだ。

やがて雰囲気が盛り上がってきて、ダイスケが俺にキスしてきた。これが男との初めてのキスだった。さらにお互いに服を脱がせ合って触れ合ったが、その途中で店員がドアを激しくノックしてきた。

気分が萎えた俺たちはそのまま解散し、また後日会う約束をしたのだが、俺の孤独はよりいっそう深まった。俺には新しい出逢いが必要だった。

 

孤独を紛らわすために俺は再び「CoolBoys!」の掲示板を見て、良さそうな男を漁っていた。するとオーストラリア人の投稿が目に飛び込んだ。

どうやら彼は短期旅行で日本に来ており、「一時的な相手」を探しているらしかった。しかも以前は日本に住んでおり、日本語も流暢なようだ。

俺はすぐに彼にメールを送って会う約束をした。ホームステイをしている彼の場所に行くわけにはいかないため、俺のアパートで会うことにした。最寄り駅は新大久保駅だから、そこまで迎えに行くと伝えた。

しかし時間になっても彼が来ないので確認したところ、彼は間違えて大久保駅で降りてしまったらしい。仕方がないので俺は大久保駅まで迎えに行って、アパートまで連れて行った。

彼の名前はクリスで、写真で見るよりはるかに美形で筋肉質な男だった。ALTや交換留学生を除き、白人の姿をこれほど間近に見るのは初めての経験だった。

 

アパートに入ると、若い俺たちはすぐに「そういう雰囲気」になり、俺は初体験を済ませた。形容しがたい熱く幻想的なひとときだった。

そのあとすぐにクリスとは別れたが、それからしばらくの間は彼とメールで連絡を取り合っていた。この経験がおそらく俺の「外専」の素質を開花させたのだろう、その後の遊び相手や恋人の大半は外国人となる。

ちなみにダイスケとはその後も何度か会っていたが、クリスのような外国人と比べると一緒にいても退屈だった。次第に連絡も取らなくなり、俺たちの関係は自然消滅となった。

ゲイ関連の体験について書くことは山ほどあるので、これからも定期的に記事を書いていきたいと思う。